低炭素住宅とは?建てる前に知っておきたいメリット・デメリット
低炭素住宅は、環境性能が高く、さまざまな経済的メリットを併せ持つ住宅です。
これからの時代に適した住宅の選択肢として注目を集めています。
省エネ性能や再生可能エネルギーの活用により、CO2排出量を抑制しながら、快適な暮らしを実現します。
さらに、補助金や税制優遇など、経済面でのメリットも魅力的です。
この記事では、低炭素住宅の定義から認定条件、具体的なメリット・デメリットまで、わかりやすく解説します。
低炭素住宅とは?
低炭素住宅は、CO2排出を抑える仕組みを持つ環境配慮型の住宅です。
環境への配慮と経済的メリットを両立させる選択肢として注目されています。
その詳細な特徴や認定条件、具体的なメリットについて、以下で詳しく解説していきます。
低炭素住宅の定義
低炭素住宅は、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する仕組みを持つ住宅です。
地球温暖化の原因となるCO2の排出を減らすことを目的としています。
そのため、高い断熱性能や省エネ設備の導入など、エネルギー効率を高める工夫が施されています。
正式には「認定低炭素住宅」と呼ばれ、所管行政庁(都道府県、市または区)が認定を行います。
人口の多い都市部の二酸化炭素排出量を抑制することを目的としているため、認定の対象は市街化区域等内に建設された住宅のみです。
この認定を受けることで、補助金や税制優遇などを受けられる可能性があります。
一般の家との違い
低炭素住宅は、一般住宅と比べていくつかの点で異なります。
まず、CO2排出量が少ないため、環境への負荷が小さいことが大きな特徴です。
これは、次の世代のために地球環境を守ることにつながります。
また、高い断熱性能により、冷暖房の効率が良くなるため、光熱費の削減も期待できるでしょう。さらに、補助金や税制優遇措置が受けられる可能性があるため、初期費用の負担軽減や長期的な経済的メリットも考えられます。
長期優良住宅との違い
長期優良住宅は、長期にわたって良好な状態で使用するための性能を備えた住宅です。
主に耐久性や耐震性、維持管理のしやすさなどが重視されます。
一方、低炭素住宅は環境性能に重点を置いています。
どちらも優れた住宅ですが、長期優良住宅が住宅の長寿命化を目指すのに対し、低炭素住宅は環境負荷の低減を主な目的としています。
税制優遇措置の内容にも違いがあるので、自身のニーズに合わせて選択することが大切です。
ZEHとの違い
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロまたはマイナスになる住宅を指します。
低炭素住宅とZEHは、どちらも環境に配慮した住宅ですが、ZEHの方がより厳しい基準が設けられています。
どちらも補助金制度がありますが、併用はできないので注意が必要です。
参照:経済産業省 資源エネルギー庁 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について
低炭素住宅として認定されるために満たすべき条件
低炭素住宅の認定を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 省エネ基準を超える省エネ性能を持つこと。かつ低炭素化に資する措置を講じていること
- 都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
- 資金計画が適切なものであること
以下でその認定基準について解説します。
ZEH・ZEB水準の省エネ性能
低炭素住宅の認定基準の一つ目は省エネ性能がZEH・ZEB水準であることです。
外皮性能は、住宅の場合、強化外皮基準を満たす必要があります。これは外皮の断熱性を評価する指標と外皮の日射遮蔽性を評価する指標をもとに判断されます。
また、一次エネルギー消費性能に関しては、省エネ基準から20%以上の削減が求められます。つまり、一般的な住宅よりもさらに省エネ性能が高いということです。
その他講ずべき措置
その他の講ずべき措置には「再生可能エネルギー利用設備の導入」と「低炭素化に資する措置」があり、再生可能エネルギー利用設備の導入は必須項目です。
再生可能エネルギー利用設備の選択肢は複数あります。
- 太陽光発電設備
- 太陽熱・地中熱を利用する設備
- 風力・水力・バイオマス等を利用する発電設備
- 河川水熱等を利用する設備
- 薪・ペレットストーブ等の熱利用
また、戸建住宅の場合は、省エネ量と創エネ量の合計が基準一次エネルギー消費量の50%以上であることも求められます。
低炭素化に資する措置は、下記の図の中のいずれかの措置を講ずるか、所管行政庁が認めるものである必要があります。
低炭素住宅のメリット
低炭素住宅には、環境にやさしいだけでなく、家計にもうれしいメリットがたくさんあります。
以下に、主なメリットをご紹介します。
国からの補助金がもらえる可能性がある
低炭素住宅を建てると、国からの補助金を受けられる可能性があります。
例えば、国土交通省の子育てエコホーム支援事業では、一定の条件を満たす低炭素住宅に対して補助金が支給されます。
事業概要 | 目的 | 子育て世帯・若者夫婦世帯が高い省エネ性能を有する新築住宅を取得する際の支援 |
対象者の定義 | 子育て世帯 | 18歳未満の子を有する世帯 |
若者夫婦世帯 | 夫婦のうちどちらかが39歳以下 | |
補助対象 | 注文住宅の新築 | 子育て世帯または若者夫婦世帯が対象 |
新築分譲住宅の購入 | ||
補助金額 | 長期優良住宅 | 1住戸につき100万円(特定区域では50万円) |
ZEH水準住宅 | 1住戸につき80万円(特定区域では40万円) | |
リフォーム | 子育て世帯・若者夫婦世帯: 上限30万円/戸 | |
その他の世帯: 上限20万円/戸 | ||
申請期間 | 2024年度 | 2024年4月2日から予算上限に達するまで |
参照:子育てエコホーム支援事業
具体的な金額や条件は年度によって変わることがあるので、最新の情報を確認してください。
税金の優遇措置がある
低炭素住宅を建てると、税金面でもお得です。
例えば、住宅ローン減税では、控除される年末残高の上限(借入限度額)が低炭素住宅の場合、新築住宅なら4500万円まで、既存住宅なら3000万円まで引き上げられます。さらに、子育て世帯・若者夫婦世帯が高性能な住宅を取得する場合は、借入限度額が5000万円にまで拡大されます。
また、「認定低炭素住宅に係る特例措置」により、登録免許税も軽減されます。所有権保存登記は一般住宅の特例0.15%から0.1%に、所有権移転登記は0.3%から0.1%に引き下げられます。
これらの優遇措置を利用すれば、さまざまな費用を少しでも抑えられるでしょう。
住宅ローンの金利が下がる
低炭素住宅を建てる際に利用できる住宅ローンが「フラット35S」です。
これは、省エネルギー性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、通常のフラット35よりも借入金利が優遇される制度です。
低炭素住宅の場合、金利Aプランが適用され、最初の5年間は金利がマイナス0.5%になります。これにより、月々の返済額を抑えることが可能です。
容積率が緩和される
低炭素住宅では、建築基準法で定められた容積率が緩和されることがあります。
低炭素化に貢献する設備(再生可能エネルギーと連系した蓄電池、コージェネレ
ーション設備等)について、通常の建築物の床面積を超える部分は、容積率算定
時の延べ面積に算入されません。ただし1/20が限度です。
光熱費の削減ができる
低炭素住宅は高い省エネ性能を持っているため、一般の住宅と比べて光熱費を大幅に削減できます。断熱性能が高く、効率の良い設備を使用しているので、冷暖房費や電気代を抑えられるでしょう。長期的に見ると大きな経済的メリットとなります。
高い断熱性能で一年中過ごしやすい家
低炭素住宅の大きな特徴の一つが、高い断熱性能です。
これにより夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境を維持できます。
結露の心配も少なくなるため、カビやダニの発生を抑制し、健康的な住環境を実現できるでしょう。
低炭素住宅のデメリット
低炭素住宅は多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。
低炭素住宅を検討する際は、これらの点も考慮に入れる必要があるでしょう。
建築時の初期費用が高くなる
低炭素住宅は、高性能な断熱材や省エネ設備の導入が必要なため、一般的な住宅よりも建築コストが高くなる傾向があります。
例えば、高性能な窓や断熱材、太陽光発電システムなどの導入により、初期費用が通常よりかかるでしょう。
「市街化区域」しか認定申請できない
低炭素住宅の認定を受けるためには、その建築地が「市街化区域」内である必要があります。これは都市部でのCO2削減を重点的に進めるためです。
認定を受けられなければ、関連する補助金や優遇措置を利用できないことにも注意が必要です。
低炭素住宅の認定手続きの流れ
低炭素住宅の認定を受けるための具体的な手続きの流れは以下の図のとおりです。
また認定申請に必要な書類は以下のとおりです。
1.認定申請書(様式第5)
2.添付図書
a. 設計内容説明書
b. 各種図面・計算書
c.その他必要な書類(所管行政庁が必要と認める図書)
d.建築確認に関する申請図書
※法第54条第2項により認定申請と併せて建築確認申請を行う場合
低炭素住宅の認定は着工前に所管行政庁で行う必要があります。
認定申請書は申請者が作成し提出しますが、必要書類は所管行政庁や審査機関に確認しましょう。
認定にかかる期間は状況により変動するため、着工の遅れを避けるためにも余裕を持って申請することが大切です。
まとめ
低炭素住宅は、初期費用や認定条件など、考慮すべき点もありますが環境にやさしく経済的なメリットも多い魅力的な選択肢です。
補助金や税制優遇措置を有効活用し、低炭素住宅を検討してみてはいかがでしょうか。
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