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HEAT20とは?ZEHや断熱等級との違いやメリットをわかりやすく解説

住宅の断熱性能の高さを表す基準のひとつに、「HEAT20」があります。

しかし他の省エネ住宅や断熱等級などとの違いがわからず、HEAT20ならではの特徴を知らない方も多いでしょう。

この記事では、HEAT20の概要や申請方法について解説します。

同じ省エネ住宅の基準であるZEHとの違いや、メリット・デメリットも記載しますので、HEAT20の取得を検討する際の参考にしてください。

HEAT20(ヒートにじゅう)とは

HEAT20(ヒートにじゅう)とは、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」という団体の略称です。

建築関係者や断熱に詳しい専門家等で構成されており、「明日の日本の住まいの方向性を示し、技術を具現化し、それを促進するための提言をすること」が目的です。

HEAT20は日本の環境やエネルギー問題を長期的な視点から考え、住宅の断熱性能を高くするのが解決につながると着目し、断熱性能を向上させる技術と評価方法を提示しています。

特に重要視しているのは、下記3つの要素です。

要素ポイント
建築断熱材・サッシ・外壁・屋根等に断熱性能の高い資材を選ぶ
設備エアコン・換気扇・給湯器等で低燃費の設備を選ぶ
創エネルギー太陽光パネル・蓄電池等で住宅内で使うエネルギーを補う

3要素をバランスよく備えることで、HEAT20が掲げる快適で環境に優しい住まいが実現するでしょう。

HEAT20における8つの地域補正

日本列島は南北に長く、寒冷地域と温暖地域で気候が大きく異なるのが特徴です。

そこでHEAT20は国内を8つの地域区分にわけ、各地域の外気条件に応じた外皮平均熱感流率(UA値)の基準を設定しています。

地域区分ごとの代表的な地域は、下記のとおりです。

1・2地域3地域4地域5・6地域7地域8地域
北海道青森・岩手秋田宮城・山形福島・栃木新潟・長野関東以西の温暖地宮城・鹿児島沖縄

引用:HEAT20「住宅シナリオと外皮性能水準

上記の表は都道府県ごとに記載していますが、実際は同じ県内でも山間部と平野部で地域が区分が異なるなど、地域の実情に合わせて水準が設定されています。

HEAT20の断熱性能に関する地域別3つのグレード

HEAT20は、断熱性能のグレードを「G1」「G2」「G3」の3つでランク付けしています。

「G3」がもっとも性能が高く、地域区分ごとにそれぞれ推奨基準が設定されているのが特徴です。

ここからは、それぞれのグレードの推奨基準値や特徴について詳しく解説します。

なお、冬でも比較的暖かい8地域(沖縄)では、どのグレードでもUA値の基準が設けられていません。

G1の基準値

地域区分1地域2地域3地域4地域5地域6地域7地域
UA値(W/m2・K)0.340.380.460.480.56
冬の最低気温概ね13℃を下回らない概ね10℃を下回らない

引用:HEAT20「住宅シナリオと外皮性能水準

G1はHEAT20が設定するグレードのなかでももっとも基準値が低いものの、ZEHや長期優良住宅、低炭素住宅よりも厳しい条件が設定されています。

G2の基準値

地域区分1地域2地域3地域4地域5地域6地域7地域
UA値(W/m2・K)0.280.340.46
冬の最低気温概ね15℃を下回らない概ね13℃を下回らない

引用:HEAT20「住宅シナリオと外皮性能水準

G2は冬でも家全体が13度以上に保たれるため、ヒートショックなどを引き起こしにくくなるでしょう。

G3の基準値

地域区分1地域2地域3地域4地域5地域6地域7地域
UA値(W/m2・K)0.200.200.230.26
冬の最低気温概ね16℃を下回らない概ね15℃を下回らない概ね16℃を下回らない

引用:HEAT20「住宅シナリオと外皮性能水準

ヨーロッパ等でUA値の義務基準が0.26W/m2・K以下なので、G3を習得してようやく世界基準の性能を手に入れられます。

HEAT20とZEH・断熱等級との違い

HEAT20とZEHや断熱等級のもっとも大きな違いは、運営機関が異なる点です。

ZEHと断熱等級は行政が実施していますが、HEAT20は社団法人です。

ZEHは省エネ性能に特化した住宅、断熱等級は断熱性能の高さをクラス分けした制度で、どちらも断熱性能の高さを評価するという点でHEAT20と同じです。

断熱等級は2022年に5・6・7が新設されましたが、HEAT20を参考にしています。

1・2地域3地域4地域5地域6地域7地域
G10.340.380.460.480.56
G20.280.340.46
G30.200.230.26
H28省エネ基準0.460.560.750.6
ZEH0.400.500.60
断熱等級70.200.230.26

引用:HEAT20「住宅シナリオと外皮性能水準

HEAT20の最高ランクであるG3と断熱等級の最高ランクである7が同レベルの高水準で、ZEHはG1よりも低い水準です。

HEAT20のどのランクでも、ZEHよりも断熱性の高い家を手に入れられるでしょう。

HEAT20認証を受ける3つのメリット

住宅をHEAT20基準にする主なメリットを、3つ解説します。

一年中室温を快適に保ちやすい

断熱性の高い住宅は外気の変化が影響しにくく、夏は暑い熱が室内に入るのを防ぎ、冬は室内の温めた空気が外に逃げるのを軽減します。

冷暖房の効率も高いため、少しの空調で室内を一年中快適な温度に保てるでしょう。

光熱費を削減できる

前述したとおり、外気温の影響を受けにくく冷暖房の効率がよい住宅は、最低限の冷暖房の使用で部屋を快適に保てます。

光熱費が抑えられるため、人や環境だけでなく家計にも優しいのが魅力です。

カビの発生やヒートショックの防止が期待できる

断熱性の高い家は室内の窓や壁が結露しにくく、アレルギーの原因にもなるカビが発生しにくいメリットがあります。

またエリアごとの温度差が生まれにくいため、急激な温度変化が引き起こすヒートショックの予防効果が期待できます。

HEAT20の住宅は、寒い冬の健康対策としても優れているのがメリットです。

HEAT20認証を受けるデメリット

HEAT20を受けるデメリットは、初期費用がかかる点です。

断熱性能の高い建材は費用が高く、一般的な住宅よりも価格が高くなりがちです。

国が設定するZEHや長期優良住宅は、国や地方自治体が用意する補助金制度を利用して初期費用を抑えられます。

しかし社団法人が運営するHEAT20は、補助金制度の対象外である場合がほとんどです。

断熱性能の高い住宅は光熱費が抑えられるため、長い目で見るとお得になる可能性があります。

費用面が気になる場合は、初期費用とランニングコストを比較してメリットがあるかどうか判断しましょう。

HEAT20の申請方法

HEAT20の認証対象は、申請者が設計または供給し、命名した「住宅システム」です。

住宅システムとは、外皮や開口部の断熱性能や日射取得、冷暖房・換気等に関する設計や計画が適切に行われ、HEAT20が設定している水準をクリアした住宅のメカニズムを指します。

HEAT20は認定を受けた住宅システムの一定の水準を証明するものであり、住宅システムを採用して建築した個々の住宅の性能を保証するわけではありません。

ZEHや長期優良住宅など個々の住宅を認定している省エネ住宅とは異なる点ため、注意しましょう。

ここではHEAT20の申請方法について、詳しく解説します。

認証の対象申請者と認証要件

HEAT20の申請対象者は、住宅供給に関係する企業・団体・個人です。

認証要件はHEAT20の住宅シナリオに適合することで、住宅シナリオは下記2点を担保するのが条件です。

環境の質を表す室温(NEB)省エネルギー(EB)
・暖房期最低室温(OT)・平成28年度からの削減率・全館連続暖房時の暖房負荷増減率 ※ルート2の場合

引用:HEAT20「住宅システム認証

申請の流れ

HEAT20には、「外皮性能地域補正ツール(ルート1)」と「熱負荷計算プログラム(ルート2)」の申請ルートがあります。

どちらもHEAT20に申請書の依頼をしたあと省エネ計算等を行い、申請書類を作成します。

その後の流れは下記のとおりです。

①申請者からHEAT20に申請の事前相談

②HEAT20が申請者に事前確認結果通知の交付

(修正がある場合は修正して再度確認)

③事前相談終了・申請受付

④審査

⑤認証委員会にて審議(指摘が生じた場合は質疑応答)

⑥認証決定と認証書の交付(希望者のみHEAT20の公式サイトで公表)

⑦申請者が認証を受けた住宅システムを用いて建築した住宅の実績報告

認証委員会での審議は1、2カ月に1回程度なので、余裕を持って申請しましょう。

HEAT20で使える補助金制度はある?

HEAT20は社団法人が運営しているため、基本的には行政が助成する制度の対象になりません。

もしHEAT20で補助金制度を利用したい場合は、並行してZEHや長期優良住宅の条件を満たせば補助金の対象になる可能性があります。

HEAT20はどのグレードでもZEHや長期優良住宅の断熱基準をクリアしているので、省エネ性能や耐震性など、他の必要条件を満たしましょう。

まとめ

HEAT20は断熱性能を重視した省エネ住宅で、最高ランクのG3は同じく断熱等級の最高ランク7と同等です。

最高ランクG3を取得してようやく、ヨーロッパやアメリカなど世界水準と同等になります。

2050年のカーボンニュートラルを実現するには、新築住宅でHEAT20水準の断熱性能が必要と言えるでしょう。

HEAT20の認証を受けるには、住宅シナリオを満たすために省エネ計算が求められるので、手間だと感じる場合は代行業者への依頼がおすすめです。

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