ZEHとは?省エネに優れた住宅のメリットとデメリットを解説
ZEHは、年間のエネルギー消費をゼロにすることを目指す、省エネルギー性能に優れた住宅のことです。この記事では、ZEHの特徴やメリット、デメリットをわかりやすく解説します。持続可能な住宅の未来に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
ZEHとは
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、年間の消費エネルギー量を再生可能エネルギーで賄い、年間のエネルギー収支をゼロにする住宅のことです。そのためには省エネ設計や高断熱材の使用、太陽光発電システムの導入が求められます。ZEHは環境配慮の観点においても優れており、温室効果ガスの削減にも有効です。そのため、ZEHは将来的に、標準的な住宅建築の方向性として注目されています。持続可能な社会を目指す上で、とても重要な役割を担っている制度です。
ZEHの種類
ZEHには以下のような種類があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。
- ZEH(ゼッチ):一次エネルギー消費量を省エネ基準より20%以上削減し、再生可能エネルギーで100%以上を補います。
- ZEH+(ゼッチプラス):ZEHの条件に加え、更に厳しい断熱性能や高性能設備が必要です。一次エネルギー消費量を省エネ基準より25%以上削減し、外皮基準の強化、高度エネルギーマネジメントシステム(HEMS)の導入、電気自動車充電設備の設置のうち2つを満たす必要があります。
- ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド):太陽光発電などの設置が困難な敷地条件のためのZEHです。基準UA値以下を達成し、一次エネルギー消費量を20%以上削減する必要がありますが、再生可能エネルギーの導入は不要です。
- Nearly ZEH(ニアリーゼッチ):ZEHを計画できない敷地条件や計画上の都合に対応するための種類です。再生可能エネルギーを用いて、一次エネルギー消費量を75%以上100%未満に削減します。
- Nearly ZEH+(ニアリーゼッチプラス):Nearly ZEHの要件に加え、一次エネルギー消費量を省エネ基準より25%以上削減し、外皮基準の強化、HEMSの導入、電気自動車充電設備設置のうち2つを満たす必要があります。
ZEHの定義
ZEHを定義するために重要なポイントが2つあります。
- 一次エネルギー消費量
- 外皮性能
それぞれ詳しく解説します。
一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量とは、電気やガスなどの最終的に使用されるエネルギーの消費量ではなく、それらが生成される前段階のエネルギー消費量です。この概念は、エネルギーがどれだけ効率的に利用されているかを測定するために用いられます。
例えば、電力は発電所で石炭や天然ガス、水力、太陽光などの一次エネルギー源から生成されます。ここでの一次エネルギー消費量とは、この発電に使用されるエネルギーの量を指します。発電所での変換効率、送電ロス、そして最終的な家庭や企業での使用効率によって、実際に利用されるエネルギー量(二次エネルギー消費量)とは異なります。単に使用するエネルギーの節約のみを評価するのではなく、そのエネルギーをつくるために費やしたエネルギーまで評価する、ということです。
ZEHのような環境配慮型住宅の設計では、この一次エネルギー消費量を削減することが重要です。エネルギー源から最終的な使用者までの全過程でのエネルギー効率を高めることにより、より持続可能な建築物を実現できます。
外皮性能
外皮性能とは、建築物の壁、窓、屋根、床などの外部構造の断熱性能を示す指標です。この性能は、建築物の断熱性能と気密性能に依存します。断熱性能は構造がどれだけ熱を伝えないか、気密性能は隙間からの空気の漏れがどれだけ防げるかを示します。これらが高いほど、建築物は保温効果が上がり、冷暖房のエネルギー消費を削減できます。具体的には、外皮性能は外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)で定義されます。
UA値は、室内と外気との熱の伝わりやすさを示す指標です。建物内外の温度差が1度の場合、建物内部から外界へ逃げる単位時間あたりの熱量(換気による熱損失を除く)を、外皮面積で割ったものです。値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高いことを意味します。
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)は、太陽日射の室内への入りやすさを示す指標です。単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で割ったものです。値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高いことを示します。
これらは地域区分別に設定された基準値以下である必要があります。これらの指標を適切に管理することで、住宅のエネルギー効率を高め、より快適で持続可能な生活環境を実現できます。
ZEHのメリット
ZEHには次のようなメリットがあります。
- 光熱費の削減
- 補助金の適用
- 環境にやさしい
- 身体にやさしい
これらはこれから家を建てる方にとって大きな魅力です。それぞれ詳しく解説します。
光熱費の削減
ZEHの大きなメリットは、光熱費の削減です。その理由は、省エネ性能が高い住宅は冷暖房に必要なエネルギーを大幅に減らせることにあります。これを実現するのは、高い断熱性と気密性です。これらの技術を活用すると、外部からの熱の流入・流出が最小限に抑えられ、室内温度を一定に保てます。太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することで、さらなる光熱費の削減も期待できます。ZEHは、短期的なコストはかかりますが、長期的に見ると、初期投資を上回る節約効果が期待できます。
補助金の適用
ZEHは、補助金の利用が可能な点が大きな魅力です。政府は、省エネとCO2削減を推進する目的で、ZEH建築に補助金や助成金を支給しています。この補助金の存在により、ZEH住宅の建築コストが削減され、普及を促進します。特に、高性能断熱材や太陽光発電システムなど、高額な建築費用がかかる部分において効果があります。初期費用の高さが課題であるZEHへの投資に際して、補助金は重要な役割を果たしています。
環境にやさしい
ZEHは、環境に優しいという魅力もあります。ZEHは、高いエネルギー効率と再生可能エネルギーの利用により、化石燃料への依存を減らし、CO2排出量の削減に貢献するためです。
特に、太陽光発電システムのようなクリーンエネルギー源を使って、持続可能なエネルギー供給を実現します。さらに、自然光や風を取り入れることにより、エネルギー消費を抑えながら快適な居住環境の実現が可能です。これにより、住宅からのCO2排出削減が環境保全に貢献し、未来世代への環境配慮につながります。
ZEHの普及は、環境に優しい生活スタイルの促進と地球環境への配慮を深めるために重要です。
身体にやさしい
ZEHは、高い断熱性能によってヒートショックを軽減し、身体にやさしい住環境を提供します。この断熱性能は室内の温度変化を抑え、急激な寒暖差による健康リスクを最小限にします。特に冬の寒い時期には、浴室や寝室など温度差が生じやすい場所でその効果が顕著です。これにより、高齢者や子供などヒートショックに敏感な人々も安心して生活できます。ZEHは、断熱技術により室内温度を一定に保ち、健康に配慮した住環境を実現するのです。
ZEHのデメリット
一方で、ZEHには以下のようなデメリットもあります。
- 建築費用があがる
- 補助金がもらえない場合もある
- 計画に制限が出やすい
一つずつ解説します。
建築費用があがる
ZEHの主なデメリットとして、建築費用の増加が挙げられます。ZEHの実現には、高断熱材、高性能サッシ、太陽光発電システムなど、従来の住宅に比べて高度な技術や材料が必要となります。これらの設備やシステムは、初期投資として高いコストがかかることが一般的です。例えば、太陽光パネルや高度なエネルギーマネジメントシステム(HEMS)は追加費用が発生し、高性能断熱材や気密材の使用もコストを増加させます。
これらの初期投資は、一部の家庭にとってZEH導入の障壁となる可能性がありますが、長期的な視点では、光熱費の削減や補助金制度の利用による初期投資の回収も期待できます。したがって、ZEHの導入を検討する際には、短期的なコスト増加と長期的な経済的利益をバランスよく評価することが重要です。
補助金がもらえない場合もある
ZEHは常に補助金が得られるわけではありません。政府や地方自治体がZEH建築を奨励し補助金や助成金を提供することがあっても、これらの支援は保証されているわけではなく、予算や申請条件によっては支援を受けられないことがあります。
補助金が得られない場合、ZEHの建築に必要な高性能設備や資材のコストは全額自己負担となります。高断熱材や太陽光発電システムなどの初期投資が建築費用を大きく増加させるため、予算に制約がある家庭ではZEHの導入が困難になることがあります。そのため、建築時期は補助金を見据えて計画をたてる必要があります。ZEHの導入を検討する際は、補助金の有無とその影響を慎重に考慮する必要があります。
計画に制限が出やすい
ZEHの建築は、計画上の制限が出やすい傾向があります。エネルギー効率の高い建築物にするためには様々な条件があり、計画がそれに抵触しやすいためです。
- 敷地の条件制限:ZEHの特徴である太陽光発電システムは、十分な日照が必要です。そのため、日照条件が不十分な地域や敷地では、効率的な太陽光発電が難しくなります。
- 設計の制約:高いエネルギー効率を達成するためには、断熱や気密性を考慮した設計が必要です。これにより、窓の大きさや配置、壁の構造などに制限が生じます。
- コストとのバランス:最適なエネルギー効率を目指すと、コストとのバランスを取る必要が生じます。特に、高性能な設備や資材はコストが高いため、予算内で最適な設計を行うことが課題です。
建築主や設計者は、これらの制約を理解し、最適なZEHの実現を目指す必要があります。
ZEHの補助金について
ZEHの補助金には、以下の4種類があります。それぞれ補助額や交付要件が異なりますので、適用可能な補助金を事前に検討することが重要です。
- ZEH支援事業(ZEH):最も一般的な補助金で、ZEH、Nearly ZEH(特定地域のみ)、ZEH Oriented(特定地域のみ)が対象です。交付要件には、ZEHの性能を満たし、SII登録のZEHビルダー・プランナーによる設計・建築・販売が含まれます。
基本補助額は55万円/戸、追加補助も可能です(環境省提供)。
- ZEH支援事業(ZEH+):ZEH+の住宅が対象で、一次エネルギー消費量削減率25%以上、再生可能エネルギーの自家消費拡大措置を2つ以上導入する必要があります。
補助額は100万円/戸です(環境省提供)。
- 次世代ZEH+実証事業:こちらはZEH+の住宅が対象で、より厳しい交付要件が設定されています。蓄電システム、V2H、燃料電池など特定の技術の導入が必要です。
補助額は100万円/戸です(経済産業省提供)。
- 次世代HEMS実証事業:最も高額な補助金で、高度エネルギーシステム(HEMS)の導入、蓄電池システムやV2Hの導入、AIやIOT技術を使用した最適制御の仕組みが要件です。
補助額は112万円/戸です(経済産業省提供)。
ZEHとは?省エネに優れた住宅のメリットとデメリットを解説【まとめ】
ZEHは、省エネルギー性能と環境配慮を兼ね備えた住宅として、今後の住宅市場でも重要な役割を果たすでしょう。人にも環境にも優しい住まいを建築することで、健康的な居住環境が実現します。持続可能な社会を目指し、質の高い生活環境を提供するためにも、ZEHの建築を推進することが重要です。
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