省エネ適合性判定とは?申請の流れや提出書類を解説します
地球温暖化対策として、日本は2030年に温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)、2050年カーボンニュートラルを目標に掲げています。
その実現に向けて、国内で様々な取り組みが行われています。中でも建築分野におけるエネルギー消費が全体の約3割を占めていることから、2015年に建築物の省エネ基準を定めた「建築物省エネ法」が施行されました。
この省エネ基準に適合しているか判定することを「省エネ適合性判定」といいます。
「省エネ適判」はその略称です。
建築物省エネ法は施行されて以降、度々改正が行われています。適合義務となる範囲は広がっており、省エネ適合性判定の重要性が増してきています。
この記事では、省エネ適合性判定の内容と申請の流れを詳しくお伝えしていきます。
省エネ適合性判定(省エネ適判)とは
まず、前述した通り、省エネ適合性判定(省エネ適判)とは、建築物が省エネ基準に適合しているか判定することをいいます。
2017年の建築物省エネ法改正で、特定条件の建築物に規制措置が設けられました。
建築主は特定建築の新築や増改築をする際、建築物エネルギー消費性能確保計画を作成し、工事の着工前に所管行政庁や登録省エネ判定機関から、省エネ基準に適合していることの適合性判定を受けることが義務化されました。
登録省エネ判定機関とは
登録省エネ判定機関とは、国土交通大臣又は地方整備局長などから、省エネ適合性判定を行う者として登録を受けた民間機関です。
建設地の所管行政庁から委任を受けた登録省エネ判定機関に依頼することで、省エネ適合性判定を受けることができます。
委任機関は、住宅性能評価・表示協会のホームページで検索することができます。
省エネ基準に適合していない場合
建築物が省エネ基準に適合していることが確認できないと、確認済証や検査済証の交付を受けることができません。つまり、工事が着工できなくなります。
民間検査機関の省エネ適合性判定の審査は1~2週間程度かかると言われています。場合によってはさらに時間がかかることもあります。そのため、着工の1~2ヵ月前には省エネ適合性判定の申請に必要な省エネ計算を始めることが推奨されます。
対象となる建築物
2024年1月現在、省エネ基準の適合義務となっている特定建築行為は以下の通りです。
- 特定建築物(非住宅部分の床面積が300㎡以上)の新築
- 特定建築物の増改築
(増改築する部分のうち、非住宅部分の床面積が300㎡以上のもの) - 増築後に特定建築物となる増築
(増築する部分のうち、非住宅部分の床面積が300㎡以上のもの)
300㎡以上の住宅を建築する場合、適合義務はありませんが、届出が必要となります。
届出を行った建築物が省エネ基準に適合していない場合は、所管行政庁が必要に応じて、計画の変更指示や命令をすることもあります。
省エネ適合性判定の申請に必要な書類
省エネ適合性判定のために必要な書類は以下の通りです。
① 以下のいずれかの書類
- 計画書
- 通知書(計画通知物件の場合)
- 変更計画書(計画変更物件の場合)
- 変更通知書(計画変更・通知物件の場合)
- 軽微変更該当証明申請書(軽微変更の場合)
② 添付図書
設計内容説明書、付近見取図、配置図、仕様書、各階平面図、床面積求積図、用途別床面積表、立面図、断面図又は矩計図、各部詳細図、各種計算書など。
③ 委任状兼同意書
④ 連絡用書類
この他にも、地域の所管行政庁や省エネ判定機関によっては、別の提出書類が必要になることもあります。
申請に必要な書類を用意するだけでも、ある程度の専門的な知識が必要です。
省エネ適合性判定の計算方法
省エネ基準に適合しているかどうかを調べる際に、BEIという指標が用いられます。
BEIは以下の計算式で求められます。
設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量=BEI
一次エネルギー消費量とは、空調や換気、照明などのエネルギー消費量から、太陽光発電などによる創エネルギー量(自家消費分に限り)を引いた数値です。つまり、その建築物内で消費されるエネルギーの合計を指します。
基準一次エネルギー消費量は、標準的な設備を採用した場合のエネルギー消費量です。
対する設計一次エネルギー消費量は実際に建築する建築物の仕様から算出したエネルギー消費量のことを言います。
BEIは標準的な仕様の建築物に比べて、どれくらいエネルギー消費量を抑えられているかを表す指標です。よって、1.0以下であれば標準より省エネ性能に優れた建築物ということになります。
また、省エネ適合性判定を受けるために、満たさなければいけない省エネ基準は以下の通りとなっています。
新築および既存建築物の増改築の場合:BEI≦1.0
既存建築物の場合:≦1.1
省エネ適合性判定の申請の流れ
それでは、省エネ適合性判定の具体的な申請の流れをご説明いたします。
大まかな流れは以下の図の通りです。
① 建築確認申請
まず、建築主が建築主事又は指定確認検査機関に建築確認申請を行います。
② 省エネ計画書類提出
建築確認申請が完了したら、所管行政庁又は登録省エネ判定機関に省エネ基準に適合した省エネ計画書類を提出して、審査を依頼します。
③ 省エネ適合判定通知書の交付
所管行政庁又は登録省エネ判定機関が提出書類を審査します。
そこで省エネ基準に適合していると判定されれば、省エネ適合判定通知書を交付します。
④ 省エネ適合判定通知書の提出
建築主が建築確認申請を行った建築主事又は指定確認検査機関に省エネ適合判定通知書を提出します。
⑤ 確認済証の交付
建築主事又は指定確認検査機関が、省エネ適合判定通知書と建築確認申請書の整合性を確認後、確認済証を交付します。
省エネ基準適合義務のある建築物の場合、完了検査時にも省エネ適合性判定を行った計画書の検査を受ける必要があります。
省エネ適合性判定にかかる項目に変更がなければ、そのまま検査を受けられます。ただし、計画変更や軽微な変更がある場合は手続きが必要です。
計画変更が生じた場合
建築計画に以下のような変更が生じる場合は、省エネ適合性判定の変更計画書を提出する必要があります。この場合、改めて省エネ適合判定通知書を受けなければ、確認済証が交付されません。
- 建築基準法上の用途の変更
- モデル建物法を用いる場合のモデル建物の変更
- 計算方法の変更(モデル建物法から標準入力法に変更した場合など)
上記以外の変更は「軽微な変更」として扱われます。
「軽微な変更」にはA・B・Cの3つのルートが設定されています。
A:建築物の省エネ性能を向上させる変更
B:一定の範囲内で省エネ性能を低下させる変更
C:再計算によって、省エネ基準に適合することが明らかな変更
ルートA・Bの場合、完了検査申請時に「軽微な変更説明書」と添付図書を提出します。そうすることで完了検査を受けることができます。
ルートCの場合は、完了検査申請前に所管行政庁又は登録省エネ判定機関に軽微変更該当証明申請を行って、証明書の交付を受ける必要があります。「軽微な変更説明書」と「軽微変更該当証明書」を提出することで、完了検査を受けることが可能になります。
2025年の法改正について
2024年1月現在、省エネ基準の適合が義務づけられているのは床面積が300㎡以上の非住宅の建築物に限られ、住宅に関しては300㎡以上が届出義務、300㎡以下であれば説明義務に留まっています。
ただし、2025年4月からは建築物省エネ法が改正され、原則としてすべての建築物に省エネ基準適合が義務化されます。省エネ基準に適合していないと、確認済証の交付が受けられなくなります。つまり、着工ができなくなってしまうのです。
まとめ
日本では、温室効果ガス削減のための様々な取り組みが行われています。
2025年に省エネ基準適合範囲が拡大されます。
2030年にはさらに省エネ基準が厳しくなる予定です。
省エネ適合性判定は、今後建築物を作る際に必須となることを覚えておきましょう。
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