長期優良住宅の認定新基準の概要と認定で得られるメリット
2022年10月に長期優良住宅法が改正されたことをご存知でしょうか。
改正されたことにより、認定基準が新しくなり、審査が厳しくなりました。
本記事では、長期優良住宅認定新基準の内容と、認定で得られるメリットについて解説していきます。
長期優良住宅の認定新基準の内容
長期優良住宅の認定を受けるためには、認定基準をクリアしなければなりません。
2022年10月に改正されたことで、見直された新基準について説明していきます。
省エネ性能の基準が引き上げられた
2022年9月30日までは、断熱等級4(UA値0.87以下)をクリアすれば、長期優良住宅の基準を満たしていました。しかし、2022年10月1日からは、断熱等級5(UA値0.60以下)をクリアし、さらに一次エネルギー消費量等級6を取得しなければなりません。
UA値とは、外皮平均貫流率のことです。
住宅の「床・外壁・屋根(天井)やドア・窓など」(これらを総じて外皮という)から逃げる熱量を、外皮の面積で割った値のことをいいます。
値が小さいほど熱を伝えにくくなり、高い省エネ性能を有していることがわかります。
断熱等級が4から5に引き上げられ、UA値0.87から0.60に変更になったということは、その分断熱性能を高めなければ長期優良住宅の基準をクリアできないということになります。
また、以前までは一次エネルギー消費量等級を長期優良住宅では評価していませんでしたが、新基準となったことで評価対象となりました。
一次エネルギー消費量等級6をクリアするためには、冷暖房設備や換気設備・給湯設備や照明設備を省エネ性能の高いものに変えて、一次エネルギー消費量を20%以上削減できることが証明されなければ基準をクリアできません。
一次エネルギー消費量等級6は現行法では最高ランクです。計算内容にもよりますがクリアするためにはエコキュートの導入などの工夫が必要です。
耐震性能の基準が見直された
以前までは耐震等級2の住宅でも長期優良住宅の基準として認められていました。
ですが、新基準に変わってからは最高ランクの耐震等級3を取得しなければ認定されなくなりました。
耐震等級3を取得するためには、壁量計算によって耐力壁を強いものに変えたり、柱や梁を太くするなどの対応をしなければならず、施工や材料費での費用も高くなってきます。
ただ、住宅性能表示制度における構造計算の場合は、許容応力度計算をすることで耐震等級2以上の基準へ適合すれば認定基準をクリアできるようになりました。
許容応力度計算は通常の壁量計算よりも金額が高くなってしまいます。
どちらで計算するかは費用や建物の形状によって検討が必要です。
既存住宅でも基準を満たせば建築行為がなくても認定されるようになった
2022年9月30日までは、建築行為を前提とし、着工前に長期優良住宅の認定を受けなければなりませんでした。そのため、一定の性能を有していても、既存住宅は長期優良住宅の認定を受けられませんでした。
しかし、2022年10月からは、基準を満たしていれば建築行為がなくても長期優良住宅の認定を受けられるようになりました。
認定を受けるためには、維持保全計画の作成が必要です。
維持保全計画では、以下のような内容を記さなければなりません。
- 維持保全しようとする住宅の構造及び設備が長期使用できる構造等であること
- 維持保全計画に点検の時期及び内容を定めていること
- 維持保全の期間が30年以上あること 等
既存住宅も長期優良の認定を受けられるようになれば、既存住宅の付加価値を高められるというメリットがあります。
共同住宅の規模が基準変更された
以前までは共同住宅の規模は、一戸あたりの床面積の合計が55㎡以上必要でしたが、2022年10月以降は40㎡以上に変更になりました。
マンション管理適正化法で認定管理計画によるみなし規定が新設された
マンション管理適正化法により認定管理計画の認定を受けた場合、長期優良住宅法の維持保全計画の一定基準に適合していると見なされるようになりました。
これをみなし規定といい、2022年10月より新設されました。
そもそも長期優良住宅とは何か?
長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するための措置がなされた優良な住宅のことをいいます。
長期優良住宅では、以下のような措置が講じられています。
- 長期にわたって使用するための構造及び設備を有していること
- 住居環境等への配慮を行っていること
- 一定面積以上の住戸面積であること
- 維持保全の期間や方法を定めていること
- 自然災害へ配慮していること
上記を満たすことで、長期優良住宅として認められます。
認定制度が始まった目的
認定制度が始まった目的は、スクラップ&ビルド型の社会からストック活用型の社会への転換です。
長い期間にわたって住み続けられる優良住宅を普及させるために長期優良住宅の認定制度が始まりました。
認定取得のための申請方法と必要書類・認定取得までの流れ
長期優良住宅の認定を取得する方法と流れは、以下の通りです。
- 工務店やハウスメーカーに長期優良住宅の認定申請を依頼する
- 民間の審査機関に審査を依頼し、適合証を交付してもらう
- 所管行政庁に認定の申請をし、審査をクリアすれば認定通知書が交付される
これらの審査を受けて、認定を受けなければ工事の着工はできません。
また、認定取得のためには以下のような書類が必要になってきます。
- 申請書
- 設計内容説明書
- 図面
- 構造計算書
- 外皮計算書
- 一次エネルギー消費量計算書
- 使用する設備のカタログ
- プレカット図
- 地盤調査報告書 など
多くの書類を用意しなければならないため、不動産会社や設計会社、施工業者などにも協力してもらわなければなりません。
2022年10月以降の長期優良住宅の認定基準
2022年10月以降の変更内容については冒頭でも解説しましたが、改めて長期優良住宅の認定基準をそれぞれの項目で簡単に説明していきます。
劣化対策
劣化対策とは、数世代にわたって住宅の構造躯体が使用できる住宅であるかどうかを評価します。
新築の場合、劣化対策等級3相当を有する必要があります。
また、床下・小屋裏の点検口を設置し、床下空間には人が通れるように330mm以上の有効高さを確保しなければなりません。
耐震性
100年に1度などの極めて稀な地震に対して、住宅の損傷レベルを低減できる住宅であるかどうかを評価します。
先にも述べたように、以前までは耐震等級2以上を評価していましたが、2022年10月以降は耐震等級3を取得しなければ認定されません。
省エネルギー性
省エネルギー性は、一次エネルギー消費量の計算書を元に評価されます。
断熱等性能等級の等級5かつ一次エネルギー消費量等級6を取得できる高性能の住宅設備を導入しなければなりません。
維持管理・更新の容易性
躯体構造と比較して耐用年数が短い内装や設備の維持管理がしやすいかどうかを評価します。
例えば、給排水管などの点検や補修がしやすいかなどを審査します。
居住環境
地域の良好な景観を形成しているか、居住環境の維持や向上に配慮されているかを評価します。
住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な広さを有しているかを評価します。
戸建て住宅の場合は、床面積75㎡以上、共同住宅の場合は少なくとも一つの階が40㎡以上(階段部分を除く)必要です。
維持保全計画
維持保全計画は、定期的な点検や補修などの計画が申請時に策定されており、計画書が添付されているかどうかを評価します。
内容には以下のようなものが含まれています。
- 構造耐力上重要な部分についての維持
- 雨水の侵入を防止する部分についての維持
- 給水・排水の設備などに関する維持 など
上記の点検の時期や内容を定め、30年以上の維持保全計画書を作成しているかどうかを審査します。
災害配慮
計画された住宅が、自然災害による被害の発生の防止や軽減に配慮されているのかどうかを評価します。
可変性(共同住宅・長屋の場合)
共同住宅や長屋の場合、可変性も評価の対象です。
高齢化社会に対応するために、ライフスタイルの変化に応じて間取りの変更がしやすい住宅かどうかを評価します。
バリアフリー性
将来バリアフリー改修に対応できるかどうかを評価します。
例えば、共用廊下・階段・エレベーターなどのスペースが広くて、将来バリアフリーに対応できるかどうかなどです。
長期優良住宅の認定で得られるメリット
ここからは、長期優良住宅の認定を受けることで得られるメリットを紹介します。
住宅ローンでの金利の優遇
長期優良住宅の認定を取得すると、フラット35S(金利Aプラン)や維持保全型フラット35の借入金利が引き下げられます。
フラット35S(金利Aプラン)の場合、当初10年間は年0.25%引き下げられるため、住宅ローン返済の負担を軽減できます。
住宅ローン控除の優遇
長期優良住宅を取得することで、住宅ローン控除の優遇を受けられます。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した時に「年末時点での住宅ローン残高の0.7%」が入居時から最長13年間にわたって所得税や住宅税から控除される制度のことです。
一般住宅の場合は、借入金額3,000万円に対してトータル最大控除が273万円です
一方で長期優良住宅の場合、4,500万円の借入金額に対してトータルで最大455万円の控除が受けられます。
倍近くの控除が受けられることから、長期優良住宅にすることで住宅ローン返済の負担をさらに減らせることがわかります。
登録免許税の減税
登録免許税とは、住宅を取得した時の手続きで発生する税金ですが、長期優良住宅を取得することで減税措置を受けられます。
一般住宅では0.15%のところを、長期優良住宅では0.1%まで引き下げられます。
不動産取得税の減税
不動産取得税とは、不動産を取得した時に発生する税金のことです。
控除額は一般住宅の場合は1,200万円ですが、長期優良住宅の場合は1,300万円に引き上げられています。
固定資産税の減税期間の延長
住宅を取得すると毎年固定資産税を支払わなければなりませんが、新築住宅の場合、3年間は減税期間となり、税額が2分の1にまで減税されます。
長期優良住宅の場合、その減税期間が2年伸びて5年間の減税措置が取られます。
投資型減税の対象
投資型減税とは、掛かり増し費用の10%を所得税から控除できる制度のことをいいます。
長期優良住宅の基準をクリアするために断熱材や設備など追加で費用がかかりますが、その費用を掛かり増し費用といいます。
控除の対象は、最大650万円までのため、控除額は最大で65万円です。
ただ、投資型減税は住宅の引き渡しから6カ月以内に居住していることなど、様々な条件があります。
補助金の対象物件に該当
長期優良住宅は「子育てエコホーム支援事業」や「地域型住宅グリーン化事業」などの補助金事業の対象です。
補助金は最大で100万円給付を受けられます。
さらに自治体の補助金制度を利用すれば、より多くの補助金を受け取れる可能性もあり、非常にお得です。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税の限度額アップ
父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等に係る贈与を受けた場合、一般住宅では500万円までであれば贈与税が非課税になります。
しかし、長期優良住宅の場合は1,000万円までが非課税になるため、贈与を受けられる金額をあげることができます。
資産価値としての付加価値
長期優良住宅は都道府県知事や市町村長からの認定を受けている住宅のため、客観的にも認められた優良な住宅です。
そのため、1つの資産として認められ、資産価値を高めることができます。
万が一売りに出さなければならない時に、長期優良住宅であれば一般住宅よりも高い値段で売れる可能性があります。
長期優良住宅の認定によるデメリット
長期優良住宅の認定を受けることで多くのメリットがありますが、デメリットもいくつかあります。
費用が発生する
長期優良住宅を建てる場合、建築費用も高くなり、申請費用もかかります。
認定基準を満たすために、耐力壁を増やしたり、性能の良い設備に変えるため、その分材料費や施工費も高くなります。
一般住宅よりも20〜30%以上割高になることもあるため、先に述べたような税金優遇措置やローン控除などを受けて初期費用でかかった分の元を取らなければ損する可能性もあるでしょう。
また、申請には手間がかかり、設計事務所等に代理で頼むと20〜30万円ほどの手数料がかかります。
所管行政庁に適合証を提出するまで着工できない
長期優良住宅は所管行政庁に適合証を提出しなければ着工できません。
また、認定の手続きを進めながら着工準備もしなければならず、打ち合わせが長引くこともあります。認定基準を満たすために、計算をしながら設備の変更もしなければならないこともあるため、打ち合わせ回数が増えるなど負担も大きくなります。
長期優良住宅の認定取得まで1ヶ月以上もかかることがあり、認定が降りるまで着工できず、希望する入居日に間に合わなくなる可能性もあるでしょう。
維持保全計画に従ったメンテナンスを行い記録しなければならない
長期優良住宅の認定審査に提出する「維持保全計画」に基づいて定期的に点検や修繕をしなければなりません。
もし定期点検や修繕をしていないと、長期優良住宅の認定を取り消されるため注意しましょう。
【まとめ】高性能住宅にするなら長期優良住宅取得を推奨
長期優良住宅は、申請費用などの負担はありますが、その分受けられる恩恵も大きいです。
税金などの控除は、住み続けてからのランニングコストの節約にもなります。
快適で安心・安全な暮らしを実現できることもメリットの一つです。
耐震性能も省エネ性能も高い住宅を建てる予定なら、長期優良住宅の取得をおすすめします。
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