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住宅に必要な断熱性能とは?等級や基準を詳しく解説

快適な生活空間を実現するためには、住宅の断熱性能が重要です。
しかし、どの程度の断熱が必要なのか、分からない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、断熱性能を向上させるための等級や基準を詳しく解説します。
また、どのようにすれば高断熱住宅を計画できるのかもお伝えします。

断熱性能に関する基本的な知識から、UA値やQ値などの専門用語の理解、さらには断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級など、現代住宅における重要な基準について、わかりやすく解説します。
快適で省エネ効果の高い生活空間に興味がある方は、ぜひ最後まで読み進めて下さい。

断熱性能について

住宅の断熱性能とは、熱の移動を制御する能力のことです。基本的に熱は、高温から低温へと流れる性質を持っています。これにより、冬は暖房による室内の熱が外へ逃げ、夏は外の暑さが室内へ侵入します。断熱材などを使用して断熱性能を上げることで、この熱の流れを遮断できます。また、断熱性能が高い家は、室内温度を一定に保ちやすく、住み心地が良くなります。断熱性は、特に現代の住宅において重要視されています。エアコンを活用する生活様式では、夏の暑さや冬の寒さから守るため、断熱性の高い住宅が求められます。

断熱性能は感覚的なものではなく、UA値などの数値で表せます。

UA値で外皮性能を確かめる

UA値は、住宅の外皮を通じて熱がどれだけ逃げるかを示す指標で、壁や窓、天井などの熱損失を数値化します。具体的には、「UA値(W/m²・K)=建物の熱損失量の合計(W/K)÷外皮面積(m²)」の計算式で求められ、外皮1m²あたりの熱損失量を表します。UA値が小さいほど断熱性能が高く、熱が外に逃げにくい住宅を意味します。例えば、UA値が0.9の住宅に比べ、0.6の住宅はより省エネルギー効率が高いです。

国土交通省では、日本を8つの地域に分け、地域ごとに異なるUA値の基準を設定しています。この基準値により、地域ごとの気候条件に合わせた断熱性能を計画することが可能です。住宅の断熱計画を立てる際には、自分の住む地域に合ったUA値を参照することが重要です。このようにUA値を活用することで、高断熱住宅の実現を目指し、快適でエネルギー効率の高い住まいを構築できます。

Q値は古い基準なので注意

Q値は、住宅の熱損失係数を示す指標です。この数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。Q値は室内外の温度差1度あたり、床面積1平方メートルから1時間で逃げる熱量を示します。Q値は換気による熱損失を含むというメリットはありますが、延べ床面積だけで算出されるため、大きい住宅ほど数値が小さくなりがちでした。

2013年の省エネ基準改正では、Q値に代わりUA値が導入されました。UA値は、壁や窓などの外皮を通じた熱損失をより詳細に評価するため、断熱性能を判断する際にはQ値よりもUA値を基準にすることが望ましいです。

断熱性能を表す等級

断熱性能には、「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」という2つの指標があります。。それぞれの基準や特徴と、新しく住宅を建てる際に考慮すべき等級について解説します。

断熱等性能等級について

断熱等性能等級は、住宅の断熱性能を数値で表す制度です。国土交通省が「品確法」に基づき設けたこの等級は、1から7まであり、数値が大きいほど断熱性が高いことを示します。各等級を満たすには、適切な断熱材や建材の選定が必要です。

2022年4月に等級5が設けられ、同年10月には更に等級6と7が追加されました。これらの新等級は、2050年のカーボンニュートラル目標達成への寄与として、住宅の断熱性能向上による炭素排出削減を目指しています。2025年度以降は新築住宅に等級4以上が義務化され、2030年には等級5が最低基準に設定される予定です。

断熱等性能等級

断熱等性能等級の7つの等級とその内容、特徴は以下の通りです。

  • 等級1:無断熱。省エネへの対応がありません。省エネ基準未満。
  • 等級2:旧省エネルギー基準に基づき、断熱を含めた省エネ性能は低いです。昭和55年の省エネ基準。
  • 等級3:新省エネルギー基準に基づき、一定レベルの省エネ性能を確保できます。平成4年の省エネ基準。
  • 等級4:次世代省エネルギー基準に準じ、壁や天井の断熱に加え、開口部には複層ガラス使用などの規定があります。平成28年の省エネ基準。
  • 等級5:ZEH基準の断熱水準に相当し、外皮平均熱貫流率に対して、等級4よりも高い性能が設定されています。
  • 等級6:「HEAT20」G2と概ね同等。省エネ基準に比べ、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を約30%削減できる高性能住宅。
  • 等級7:「HEAT20」G3と概ね同等。暖冷房が無くても快適に過ごせるレベル。一次エネルギー消費量の削減率が約40%可能。

HEAT20とは

HEAT20は、「一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称です。2009年に発足し、2020年に社団法人化したこの組織は、低環境負荷で安全かつ高品質な住宅の実現を目指しています。主な焦点は居住空間の温熱環境とエネルギー性能、建築耐久性で、外皮技術を含む設計や技術の研究・開発、普及活動に取り組んでいます。

HEAT20基準の住宅は、高断熱性能により住宅全体の温度を均一に保つことを目指しています。これにより、暖房機器のない部屋や廊下、トイレなども冷え込まず、快適に過ごせるからです。一度暖めた室内は温度が下がりにくく、暖房を止めても暖かさが持続します。

HEAT20では、断熱性能に基づいた基準値を設け、G1やG2などのランクで住宅を評価しています。これらの基準は国の最低基準よりも厳しく設定されており、省エネ住宅の指標として機能しています。

一次エネルギー消費量等級について

一次エネルギー消費量等級は、住宅が1年間に消費するエネルギー量を表す基準です。この等級は2013年に設けられ、「設計一次エネルギー消費量」÷「基準一次エネルギー消費量」で計算されるBEIによって決まります。BEIが小さいほどエネルギー効率が高く、等級は上位になります。

具体的には、等級4はBEIが1.0で、等級5ではBEIが0.9に設定されています。等級5を達成するためには、等級4に比べ一次エネルギー消費量を10%以上削減する必要があります。さらに、2022年4月1日の改正で新たに等級6が加わり、等級4に比べ20%以上の削減が求められ、BEIは0.8以下と定められています。これらの基準は、住宅のエネルギー効率向上と環境負荷低減を促進するために重要です。

BEIとは

BEI(Building Energy Index)は、建築物のエネルギー効率を評価する指標です。具体的には、設計された建物の一次エネルギー消費量を、同地域や用途、使用条件に基づく基準一次エネルギー消費量で割った比率を示します。この値は、建築物省エネ法により定められ、エネルギー消費性能計算プログラムに基づいて算出されます。

BEIの基準は、新築される住宅や建築物において重要です。BEIが1.0以下であれば、その建築物は省エネ基準に適合していると評価されます。

一次エネルギー消費量等級

一次エネルギー消費量等級の内容、特徴は以下の通りです。

  • 等級3:BEI1.1以下。主に既存の住宅に適用され、一定レベルの省エネ性能が保たれています。
  • 等級4:BEI1.0以下。現代の基本的なエネルギー効率基準を満たし、適度な省エネ性能を有します。
  • 等級5:BEI0.9以下。等級4より10%以上エネルギー消費量を削減し、効率的なエネルギー使用を実現します。
  • 等級6:BEI0.8以下。等級4基準に比べて20%以上のエネルギー消費量削減が求められ、高いエネルギー効率を示します。

これから建てる住宅がクリアすべき等級は?

これから建てる住宅において、目指すべきは断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6です。これらは、2030年までに義務化される性能基準です。これらの等級は、ZEH基準に該当し、現在は高断熱の仕様に含まれています。しかし、省エネ基準は時代とともに改正され、段階的な刷新が計画されています。

この背景には、2020年10月の菅首相による2050年のカーボンニュートラル宣言と、2030年の温室効果ガス削減目標があります。これに伴い、再生可能エネルギーの普及が進んでおり、エネルギー使用の合理化が求められています。2022年3月に「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、5月に成立、2023年4月から施行されました。この改正は、化石エネルギーだけでなく再生可能エネルギーの効率的な使用とCO2削減の加速を目的としています。

断熱等性能等級5や一次エネルギー消費量等級6を目標とすることは、将来の義務基準に先駆け、持続可能な住宅の構築に不可欠となります。

高断熱住宅をつくる方法

高断熱住宅の構築には、複数の重要な要素があります。

  • 高断熱サッシを使用する
  • 高性能断熱材を使用する
  • 高気密住宅にする
  • 熱交換換気を導入する

これらの方法を組み合わせることで、快適でエネルギー効率の高い高断熱住宅を実現できます。

高断熱サッシを使用する

高断熱住宅を構築する際、高断熱サッシの使用は非常に重要です。その理由は、窓が住宅の中で最も熱が逃げやすい箇所だからです。窓の断熱性能を高めることは、熱損失を大幅に減らし、全体的なエネルギー効率を改善する上で最も効果的な方法の一つです。

具体的には、複層ガラスやトリプルガラスの使用が考えられます。これらのガラスは、その間にある空気層によって断熱性能が高められます。さらに、この空気層に乾燥空気の代わりにアルゴンガスやクリプトンガスなどの熱伝導率が低い気体を充填することで、断熱性能をさらに向上させられます。また、Low-Eガラスを使用することで日射遮蔽性能が高まり、夏場の冷房効率を上げることが可能です。

高断熱サッシの適切な選択と使用は、高断熱住宅の実現に欠かせない要素です。

高性能断熱材を使用する

高断熱住宅を実現するためには、高性能断熱材の使用が欠かせません。住宅の外皮全体を覆うことで、熱の放出を効果的に防ぎ、室内の快適性を高められます。具体的には、住宅の外皮の大部分を占める床、壁、天井に隙間なく高性能な断熱材を設置することが重要です。これにより、建物全体の断熱性能が向上し、冷暖房時のエネルギー効率が大幅に改善されます。

断熱材には様々な種類がありますが、発泡系の断熱材は特に断熱性能が高く、効果的です。また、繊維系の断熱材もグレードに応じて性能に差があり、コストパフォーマンスを考慮した選択が必要です。

このような高性能断熱材を適切に使用することで、住宅内の温度を均一に保ちつつ、冷暖房にかかるエネルギー消費を削減し、年間を通じて快適な居住環境を実現できます。

高気密住宅にする

高断熱住宅を構築するためには、高気密住宅を目指すことが重要です。その理由は、住宅の隙間を小さくすることで、熱損失を効果的に防げるからです。

具体的には、外皮部分において適切な気密処理が必要です。これには、窓やドアの隙間、壁の接合部などに注意を払い、細部にわたる施工精度が求められます。建築時には、しっかりとした気密性能を持つ材料の選択と正確な施工が必須です。また、建築会社の技術力や信頼性も大きく影響します。高気密住宅を実現するためには、専門知識を持ったプロの施工が不可欠です。

高気密住宅にすることで、外からの冷気の侵入や内部の暖気の放出を防ぎ、高断熱性能を保つことが可能になります。

熱交換換気を導入する

高断熱住宅を実現するためには、熱交換換気システムの導入が効果的です。換気を行う際、建物内外の空気の入れ替わりによって熱が逃げることがあり、これがエネルギーのロスにつながります。

熱交換換気システムは、排気と給気を機械的に制御する一種換気です。このシステムは、室内から排出される暖かい空気の熱を利用して外から取り入れる新鮮な空気を暖めます。逆に、夏場は室内の涼しい空気で外気を冷やせます。このように、熱交換換気を行うことで、換気をしながらも室内の熱を保持し、熱の放出を効果的に防げます。

熱交換換気システムの導入は、省エネルギー性能の高い住宅構築において重要な役割を果たします。

住宅に必要な断熱性能とは?等級や基準を詳しく解説【まとめ】

この記事では、住宅の断熱性能の重要性と、それを実現するための等級や基準について詳しく解説しました。断熱性能は、住宅の快適性とエネルギー効率に直結します。UA値や等級に基づいて、計画的に断熱性能が高い住宅を建てることが重要です。特に、断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級は、将来的に義務化される見込みであるため、これらの基準を満たすことが今後ますます重要になります。

断熱性能を向上させることは、快適な住環境を提供するだけでなく、長期的なエネルギーコストの削減にも繋がります。この記事が、断熱住宅を計画する際の参考になり、理想的な住宅実現の参考になれば幸いです。

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