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ZEB認証とは?手続き方法や費用、企業が得られるメリットを解説

ZEB認証を受けるには、省エネ建築物の中でも高度な省エネ性能が要求されます。

しかし、その分補助金制度や光熱費の削減など、さまざまな恩恵が受けられるのが魅力です。

この記事では、ZEB認証の概要と手続きや、ZEB認証建築物を所有する企業へのメリットをわかりやすく解説します。

ZEB認証とは

ZEBとは、オフィスビルや公共施設など、非住宅で年間一次エネルギー消費量の収支をゼロにするのを目的とした制度です。

建築物で空調や照明などを使用する際に消費するエネルギーを減らし、必要エネルギーを太陽光パネルなどで生成することで、「ネット・ゼット・エネルギー」を目指します。

ZEB取得にはBELSの評価が必要で、認証を受けると省エネ性能ラベルに表記して周囲に告知できます。

ZEB認証の判定方法

ZEB認証の判定方法は、省エネと創エネによる年間の一次エネルギー消費量(BEI)の削減率です。

BEIは、下記の計算式で算出できます。

年間一次エネルギー消費量(BEI)=設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量

BEIが小さいほどエネルギー消費量が少なく、省エネ性能が高いと評価されます。

基準一次エネルギー消費量や設計一次エネルギー消費量を求める計算式は、下記の図のとおりです。

引用:環境省ZEB PORTAL「ZEBの定義

ZEBの段階4種類と基準値

ZEB認証を受けるには、基準一次エネルギー消費量削減率100%以上など条件が非常に厳しく、思うように非住宅のZEB化が進まないのが現状です。

そこで政府は、4つの目標数値の段階を用意することでZEB化へのハードルを下げ、新築・既存建築物のZEB化を促しています。

段階基準一次エネルギー削減率(省エネのみ)基準一次エネルギー削減率(創エネ含む)その他の条件
ZEB Oriented(ホテル・病院・飲食店等)30%以上・創エネ設備不要・建築物全体の延べ床面積10,000㎡以上
ZEB Oriented(事務所・学校・工場等)40%以上
ZEB Ready50%以上・創エネ設備不要
Nearly ZEB50%以上75%以上100%未満・創エネ設備必要
ZEB50%以上100%以上

引用:環境省「ZEB PORTAL

Nearly ZEB以上の認証には創エネ性能が必須のため、専門業者に依頼するとスムーズでしょう。

ZEB認証の手続き方法

ZEB認証の手続き方法は、新築と既存建築物で少し異なります。

それぞれの流れについて、詳しく解説します。

新築の場合

ZEBの補助事業を活用して新築を建てる場合、2年程度の期間をかけながらZEB化実現を目指すのが一般的です。

基本の流れは、下記のとおりです。

1年目

①設備やデザインなどの基本設計

②ZEB設計に精通した業者に依頼

③基本設計をもとに詳細設計

④ZEB認証の手続き(BELS評価の取得)

2年目

①ZEBの補助事業申請

②施工業者の決定

③施工

④施工検査

⑤補助事業の執行団体に実績報告書を提出

ZEBの補助事業は年度始めに申請する必要があるため、前年度に設計を済ませておきましょう。

また補助事業を活用する場合、その年度以内に施工を完了するのが条件です。

ただしある程度規模が大きい事業の場合、年度を跨いでの事業展開も認められています。

既存建築物の場合

既存建築物では建築物の造りによってZEB化ができないケースもあるため、事前調査などが必要です。

新築の場合よりも時間や手間がかかるため、3年程度の期間を目安に計画を立てましょう。

1年目に既存建築物がZEB化できる可能性を調査し、2年目から新築建築物の1〜2年目と同じ流れで設計書の作成や補助事業申請を進めます。

複数の建築物でZEB化を目指すなら、一括で調査していくと効率良く計画が進むでしょう。

ZEB認証を実現するための3ステップ

ZEB認証を受けるには、基本一次エネルギーの正味ゼロという高い壁をクリアする必要があります。

ここでは、ZEB認証を確実に実現するための3ステップを解説します。

①消費エネルギーを減らす(パッシブ技術)

ZEB認証にもっとも必要なのが、空調や照明、換気など建築物で使用する消費エネルギーを最低限にすることです。

そのために、外気の熱を室内に入れないための外皮性能や、夏場に太陽光が入り過ぎないようにする日射遮蔽性能が求められます。

外皮性能の向上には、外気に直接触れる屋根や外壁、窓等に高性能断熱材を採用するのが基本です。

日射対策は、窓に高性能ガラスを採用したり、ブラインドや庇を設置したりするのが有効です。

夏場の日射対策をしながらも自然採光を取り入れられると、照明によるエネルギー消費も最低限に抑えられるでしょう。

②効率的にエネルギーを使う(アクティブ技術)

パッシブ技術で消費エネルギーを抑えても、ゼロにはなりません。

建築物内で快適に人が活動するためには必ずエネルギーが必要なため、最小限のエネルギーを効率よく使う技術が求められます。

省エネ性能の高い設備を導入したり、無駄なエネルギーを使用している箇所を洗い出したりして、使用エネルギーの高効率化を目指しましょう。

③エネルギーを生成する(創エネ技術)

エネルギーの効率的な運用準備ができたら、使用エネルギーを生み出す創エネ技術を検討します。

一般的な建築物なら、太陽光発電システムの採用が一般的です。

建築物で使用するエネルギー以上のエネルギーを創エネすることで、ZEB認証の条件である「エネルギー消費量100%以上削減」が実現します。

ZEB認証にかかる費用の目安は?

ZEB認証にかかる費用は、建築物の規模や使用目的によって異なるため一概には言えません。

環境省のガイドラインによると、小規模事務所でZEB Readyを新築するケースでは、通常の建築物よりも10%程度コストが上がるとされています。

たとえば3,000万円の建築物なら、300万円程度のコスト増です。

省エネ性能向上や創エネ設備導入で初期コストが上がってしまうのは避けられないため、国や地方自治体の補助金制度を活用して交付金などを受けましょう。

ZEB認証で使える補助金制度

現在国内では2030年までに、新築建築物の平均でZEB Ready相当の実現を目標にかかげています。

それを促進するために、毎年ZEB認証に使える補助金制度が複数用意されています。

2024年度にZEB化に活用できる主な補助金制度は、下記のとおりです。

事業名支援団体概要
ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業環境省ZEB化に必要なシステム・設備機器等の導入支援
LCCO2削減型の先導的な新築ZEB支援事業環境省建築物で発生する二酸化炭素の削減など要件を満たす建築物に、ZEB化に必要なシステム・設備機器等の導入支援
地域脱炭素推進交付金環境省脱炭素の取り組みが活発な地方公共団体に対し交付金による支援
ZEB実証事業経済産業省設計情報や事業完了後の実施状況の提示、公表を承諾する等の要件を満たした事業者に対し、費用を補助
サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)国土交通省省エネ化に取り組む建築物の費用を補助
住宅・建築物省エネ改修推進事業国土交通省ZEB同等レベルの省エネ改修工事にかかる費用を補助

地方自治体が用意する補助制度もありますので、初期費用や運用費を抑える上でもっともメリットの高いものを選びましょう。

基本的に国が用意する補助制度の併用はできませんが、国と地方自治体それぞれの補助制度の併用は可能なケースがあるので、利用する際は要綱を確認しましょう。

建築物のZEB化が企業に与えるメリット

ZEB認証を受けた建築物は環境に優しいだけでなく、光熱費の削減や快適な室内環境による生産性の向上など、企業にとってさまざまなメリットを生み出します。

特に近年では世界的に「持続可能な社会づくり」が注目されているため、省エネ性能の高い建築物は社会的に評価されやすい傾向です。

国内の省エネ建築物最高峰ともいえるZEBを所有している企業は企業価値が上がり、投資家などの関心を惹けます。

不動産価値も高いので、他の企業に貸し出す際も通常のテナント料より高く設定できるでしょう。

ZEB化で注意すべきデメリット

ZEB化におけるデメリットは、初期費用が高額になりやすい点です。

前述したとおり、ZEB認証建築物は一般的な建築物よりも施工や設備費用がかかるため、負の遺産になるのではないかと懸念する声があります。

ZEB化で費用負担を軽減するなら、補助金など補助事業を有効活用するのが重要です。

また「消費エネルギー削減=光熱費削減」であり、創エネで余った電力を売電することも可能なので、長い目で見ればメリットが高いと言えます。

まとめ

ZEB認証の実現には、新築で2年程度、既存住宅で3年程度の時間がかかります。

補助事業を活用する場合は申請時期や施工期間が定められているため、計画的に準備を進めるのが重要です。

2050年のカーボンニュートラルに向け、行政が非住宅のZEB化を推奨しているため、設計士にとって建築物のZEB化は避けられない課題です。

ZEB取得の手続きや省エネ計算が手間だと感じた際は、ZEBや省エネ計算の申請代行を行ってくれる代行会社などの手を借りながら、持続可能な社会への準備を進めましょう。

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